電子書籍化されない理由の考察

いまだに電子書籍化されていない紙の本が多くあります。電子書籍化されない理由は何でしょうか。電子書籍元年と言われてから、もうじき10年。電子書籍化が進まない理由について考えてみました。

久しぶりの紙の本

紙の本を読まなくなって5、6年になります。紙の書籍を読まなくなった代わりに電子書籍を利用しています。一度、電子書籍の良さを知ってしまったら、止められません。

先日、久しぶりに紙の本を読み、愕然としました。とにかく読みにくい。老眼が進んだから、というのも大きいのだろうと思いますが、寝室などでは照明の位置が気になって、上手く読書に没頭できません。

保管場所や持ち歩きの利便性も、もちろんですが、老眼が進みつつあるわが身にしてみると、やはり読みやすいというのが、やはり電子書籍の第一の利便性です。

とはいえ、残念なのは、今でも電子化されていない書籍の多いこと。最近は、リアルな書店に行かず、電子書籍の販売サイトばかりを見ていたせいで、あまりに気になりませんでしたが、改めて確認をしてみると、今でも電子書籍化されていない本は多いようです。

どうして電子書籍化されないのでしょうか。

電子書籍化されない理由

少し調べてみましたが、あまり確実なことは分かりませんでした。とはいえ、折角調べたので分かった範囲で簡単にまとめておきます。

電子書籍化の是非において、鍵を握っているのは、作家さん、出版社、電子書籍販売会社の3つのプレイヤーです。それぞれのプレイヤーについて理由を確認してみましょう。

作家さん

電子書籍化において一番大きな存在は、やはり作家さんのようです。著作者が認めない限り、原則として電子書籍化を行うことができません。

ただ、明確な理由と共に電子化反対の声を上げている作家さんは少ないようで、反対の理由は、周辺の想像によると思われるものがほとんどです。

よく目にするものとしては、以下のようなお話しがあります。

  • 紙の本が好きだから(本は紙で読むべきという考え)
  • 海賊版の流通が怖い

あとは経済的条件的な問題も考えられますね。作家さんの印税の取り分が電子書籍の方が小さければ、電子化を拒否する可能性はありそうです。

単純に考えれば、電子化した方が全体の売上金額自体は上がりそうな気がするので、やはり紙の本が好きと言ったような、エモーショナルな要因なのでしょうか。

出版社

出版社に関しては、大きく権利処理の手間の問題と、採算性の問題に分けられるようです。

出版物に記載される文章、写真、絵などの契約調整がたいへん

すでに亡くなっている作家さんの調整が難しいのはもちろん、本に載っている写真やイラストなど、すべてに著作権や肖像権が存在します。

紙の本を出版する際には、紙を前提とした契約しか結んでいない為、新たに関係者と契約を取り直すのは非常に大変なようです。

でも、本やコミックなら、それほど登場人物は多くなさそうですよね。

採算性の問題

電子化をするにもコストがかかります。古い本では、そもそも著作~出版までの間、一度も電子化を経ずに出版されているものもあり、電子的な文書を用意するだけでも手間がかかります。

また、電子データがあったとしても、電子書籍を用意して、販売管理を行うためには、その分のコストがかかります。

そういったコストを吸収して採算がとれるかどうかがネックとなるようですね。

電子書籍販売会社

電子書籍販売会社は、当然多くの電子書籍を取り扱いたいものと思います。商品が増えるだけ売り上げが上がる可能性があるし、出版社に比べれば、商品の増加に伴うコストも低く抑えることができそうです。

この為、大きな問題はなさそうに思いますが、大手の寡占が進んでいる為、出版社にかなり厳しい条件を出すこともあるようです。

既存書店に対する配慮

全体に係る問題として、既存書店や取次店などに対する配慮があり、それによって電子化が抑えられている部分はあると思います。

もともと出版は巨大な産業です。新しいテクノロジーの誕生によって、その巨大産業の川下部分の既得権が一気に失われてしまうのは、問題も大きいでしょう。

心情的な問題もあると思います。

ただ、新しい技術によって既存産業が衰退の道を歩むことは、歴史上、普遍的に繰り返されてきたことです。最終的には時間によって解決されるものと思います。

まとめ

調べてみた範囲では、採算性の問題、権利調整関係の問題、そしてエモーショナル部分に起因する問題に分解できるように感じました。

採算性や権利関係の問題は、純粋に手間とコストの問題なので、数字に還元できる問題だと思います。もし、計算結果がプラスであれば電子化する、計算結果がマイナスであれば電子化しない。

つまり、この計算の結果、現時点で電子化されていない本は、今後も電子化される可能性は低いように思います。

エモーショナルな部分に起因する問題というのは、要するに「本は紙であるべき」という感覚に起因するものです。こちらの方は、いつか気持ちが変われば電子化される可能性もありそうですね。

最後にいち利用者として、作家さん、出版社さんにお願いです

電子書籍は老眼にやさしい媒体です。高齢化が進む日本でぜひとも普及を進めていただきたいと感じています。

ご拝読、ありがとうございました。

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