最近話題のロボットアドバイザー。THEOとWealthNavi(ウェルスナビ)。ネットにあふれている運用評価を見ると目覚ましいようにも見えますが、ここ数年で見ると日経平均や米国のダウ平均、S&P500などの主要な株価指数も上がっています。
もしも普通にインデックス投信を買っていた場合、THEOやウェルスナビに勝つことはできたのでしょうか。各社にて公表されている運用実績から考えてみます。
比較の条件
THEOもウェルスナビもリスク資産は主に米国の株式やETFで運用しています。そう考えるとと米国の株式インデックスとのパフォーマンスの比較をするのが適当かもしれません。
ですが我々が一番購入しやすいのは日本株インデックス投信なので、参考までに日本の株式インデックスとも比較を行います。
比較するインデックスおよびETFは以下を対象とします。
・東証株価指数インデックス(TOPIX)
・日経225ETF
・TOPIX ETF
・ニューヨークダウ インデックス
・S&P500 インデックス
考え方としてはシンプルで、2016年3月時点で購入を行い、そのままホールドしていた場合、2019年11にはどの程度の利益(あるいは損失)が出ていたかを考えます。
・ETFは売買手数料を考慮しない
・THEO、ウェルスナビは各社の公表値の内上限のリターンを使用する
THEOもウェルスナビもリスクを大きく取れば、株式の組み入れ率が上がり、リターンも大きくなるという考え方の為、株式インデックスと比較するのであれば、リスク値上限を利用すべきと考え、上記の条件としました。
さて。結果はどうなるでしょうか。
THEOの運用実績
THEOについては、公式HPにより運用実績が公開されています。
上記リンクに記載されている2016年3月から2019年11月までの実績は以下の通りです。
リスクカテゴリ | 範囲 |
---|---|
低 | 9%〜12% |
中 | 12%〜16% |
高 | 16%〜19% |
少し分かりにくい表ですよね。
THEOは「グロース」「インカム」「インフレヘッジ」というリスク度の異なる資産カテゴリへの投資比率を指定することができます。
「グロース」は世界の株式、「インカム」は国債、「インフレヘッジ」は金や不動産が含まれ、リスク度は順に高、中、低となります。
このカテゴリの資産割合で、グロースが多いポートフォリオをリスクカテゴリ高、インカムの多いポートフォリオを中、インフレヘッジの多いポートフォリオを低としています。
今回は株式インデックスおよびインデックス投信との比較の為、リスクカテゴリは最大のものを比較に用います。
リスクカテゴリ最大のレンジは16%~19%なので、採用する比較値は19%ですね。
ウェルスナビの運用実績
ウェルスナビの運用実績もウェルスナビから公式に発表されています。
表の部分だけ抜き出すと以下の通り。
2016年1月から2019年11月までのリスク許容値別リターン
リスク許容度 | 累積元本額(円) | 資産評価額(円) | リターン |
---|---|---|---|
1 | 238万 | 267万 | +12.1% |
2 | 238万 | 279万 | +17.3% |
3 | 238万 | 287万 | +20.6% |
4 | 238万 | 294万 | +23.6% |
5 | 238万 | 298万 | +25.3% |
公式ページではドル建てと円建ての表記がありますが、比較を単純にする為に円建ての方を採用します。
THEOと同様にリスク許容度により、リターンが異なります。
THEOは2016年3月から、ウェルスナビは2016年1月からと期間に若干の差がありますが、無理な補正はせずに、このままの数字で考えることとします。
THEOと同様にリスク許容度最大の実績値(+25.3%)を採用します。
各種株式インデックスの推移
日経平均
日経平均の2016年3月から2019年11月までのパフォーマンスは以下の通り。
2016年3月1日終値 | 2019年11月29日終値 | 収益率 |
16,085.51 | 23,293.91 | +44.81% |
同じ期間で44.81%成長しています。
TOPIX
TOPIX(東証株価指数)の2019年3月から2019年11月までのパフォーマンスは以下の通り。
2016年3月1日終値 | 2019年11月29日終値 | 収益率 |
1,300.83 | 1,699.36 | +30.64 |
TOPIXの成長率は30.64%ですね。
同じ日本株なのにTOPIXの方が銘柄数が多い為、平均の値動きは小さくなる傾向があります。
また、この期間はNT倍率(※)が開いた期間としても話題になった期間なので、TOPIXの方がパフォーマンス的には見劣りしても仕方がないですね。
【※】NT倍率
日経平均株価をTOPIXで割って求める指標。日経平均の買われ過ぎ、売られ過ぎなどを判断する際に用いられます。
ニューヨークダウ
次はニューヨークダウです
2016年3月1日終値 | 2019年11月29日終値 | 収益率 |
16,516.50 | 28051.41 | +69.84% (67.1%為替補正後) |
アメリカ強し、ですね。
この期間中のドル円の為替レートは、2016年3月1日(113.98)から2019年11月29日(109.51)へと変化しています。
つまりドルベースの資産の評価は96.08%にすれば、概ねの円建て評価額が得られます。
ドルベースの収益率69.84%に為替変動分を補正(96.08%を掛ける)すると、67.1%となります。これを円ベースの収益率とします。
S&P500
2016年3月 | 2019年11月 | 収益率 |
2021.95 | 3101.90 | +53.41% (+47.39%為替補正後) |
組み入れ銘柄数が多いため、NYダウに比べれば増加率はおだやかです。
それでも好調だった米国株式だけあって、為替補正後でも+47.39%です。
主なインデックス投信の成績
次はインデックス投信です。値動きの分かりやすいETFを使います。
日経225連動型上場投資信託(1321)
2016年3月1日終値 | 2019年11月29日終値 | 収益率 |
16,490 | 23,980 | +45.42% |
ほぼ同じ期間に日経平均と同等のパフォーマンスですね。
投信では信託報酬などの運用コストに足を引っ張られる為、普通はインデックスを下回るパフォーマンスになるはずなんですが、ETFの場合は市場で取引される為、需給により価格が決まります。
結果、まれにインデックスを上回るパフォーマンスをたたき出してしまうことがあります。
ダイワ上場投信TOPIX(1305)
2016年3月1日終値 | 2019年11月29日終値 | 収益率 |
1,353 | 1,779 | +31.49% |
TOPIX上場投信でもTOPIX本体とほぼ同じパフォーマンスでした。
結果
これまでに算出した収益率を収益率の高かった順に並べ替えると以下の通りとなります。
順位 | 項目 | 収益率 |
1 | ニューヨークダウ | +67.1% |
2 | S&P500 | +47.39% |
3 | 日経225 ETF | +45.42% |
4 | 日経平均 | +44.81% |
5 | TOPIX ETF | +31.49% |
6 | TOPIX | +30.64% |
7 | ウェルスナビ | +25.3% |
8 | THEO | +19% |
ウェルスナビのみ集計対象期間が2016年2月から2019年11月ですが、他の項目はすべて2016年3月から2019年11月でそろっています。
結果を整理
結果的にみるとインデックスの圧勝です。同じ金額を投資していれば、リターンが一番大きかったのはNYダウでしょう。
では、ロボットアドバイザーに意味はないのでしょうか?
2016年3月から2019年11月という期間は、俯瞰して見れば一貫して株価が上がり続ける順調な相場展開でした。
この為、端的に言えば何を買っても儲かったといえます。
単純な上昇相場であれば、コスト的に一番有利なインデックスが勝つに決まっています。100%株式なので、リスク度Maxですしね。
一方のロボットアドバイザーたちは、100%株式を組み入れた分けではなく、その他の資産の組み入れも行っています。
もしも2016年3月~2019年11月が下げ相場であれば、ロボットアドバイザーの方がマイナス幅が小さかった可能性は高いでしょう。
この為、前述の表による比較からは、単純にはロボットアドバイザー有為性を否定できません。
ただ、もしも下げ相場でロボットアドバイザーがインデックス以上に下げるのであれば、存在する意味を問われます。
ロボットアドバイザーがAIによる相場の予見性を売りにするのであれば、下げ相場での損失を限定させることができることを示す必要があります。
そのあたりを今後慎重にウォッチして行きつつ、ロボットナビとの付き合い方を考える必要があると思います。
まとめ
これまでの結果を簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。
・2016年~2019の収益で見るとインデックス投信の勝利
・ただし、株式組み入れ比率の差もあり現状での単純比較は確実性を欠く
・今後発生しうる相場の下落局面も含めて継続してウォッチ
以前、アクティブファンドがパッシブファンド(インデックス投信など)に勝つのは難しいという趣旨の記事を書いたことがあります。
アクティブファンドはパッシブファンドに比べてコスト高(信託報酬などが高い)な為、運用成績が下がる。ファンドマネージャーは手数料を埋める程、相場に対する予見性を発揮できない。
だから、長期保有をするならインデックス投信がおすすめという趣旨の記事です。
ロボットアドバイザーは、人間ではなくAIが運用指示をするアクティブ運用ファンドと定義できます。
AIであれば手数料の差を埋めるほど、相場に対する予見性を発揮できるのかを問われていますが、今回の比較を見る限り、十分な予見性を持っているとは言えない状況でした。
ただ、海外のヘッジファンドでもすでに運用はAIを使うのが当然となりつつあります。個人の資産運用も長い目で見れば資産運用業務はAIを使うことがあたりまえになるでしょう。
私の方でも、まずは少額の資産をロボットアドバイザーに移して運用評価を進めたいと考えています。
もしも興味がおありでしたら、こちらのリンクからTHEOの口座開設を行うことができます。
以上、ご拝読、ありがとうございました。
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