資金管理、ロット数管理を厳格に行うことで、強制ロスカットは防げます。ただし短期間で大きな利益を見込む手法ではありません。こつこつと利益を積み上げたいとお考えの方はご一読ください。
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より実践的な方法
前回までは米ドルと日本円の取引(USD/JPY)を例として使用していましたが、現時点ではUSD/JPYでこの取引を行うことが有効かどうかは疑問があります。
長期渡る日本の金融緩和と米国の利上げにより、USD/JPYは高値水準にあります。この為、長くUSD/JPYを保有する場合には、大きな下落のリスクを許容する必要があります。
それではどのような通貨ペアであればリスクが低いと言えるのでしょうか。もう少し実践的な通貨ペアの決め方を考えます。
歴史レベルでの相場の底の水準を意識する
主要通貨ペアの現在と最安値の関係は以下の通りです。現在値は2019年12月2日 13:40時点です。
通貨ペア | 現在値 | 史上最安値 | 差PIPS |
USD/JPY | 109.66 | 75.74 (2011年10月) | 3392 |
EUR/JPY | 120.86 | 88.87 (2000年10月) | 3199 |
EUR/USD | 1.1020 | 0.8225 (2000年10月) | 2795 |
GBP/JPY | 141.63 | 116.81 (2011年9月) | 2482 |
GBP/USD | 1.2915 | 1.0790 (1985年2月) | 2125 |
ご覧の通り歴史的底値までの距離は、現状、USD/JPYが最大です。これは世界を見まわしてみても、主要国の中では、アメリカの金利が一番高いせいですね。(別稿としていつか書きたいと思いますが、金融市場は金利を中心に動いています)
一方で安いのはポンドです。Brexitを問う国民投票結果、その後の議会の混乱によって随分下げを強めました。
こうしてみると、長期保有を前提とした場合、USD/JPYのロングはあまり向いていないかもしれませんね。
過去最安値の比較では、GBP/JPYが2482pips、GBP/USDが2125で、それほど大きな差はないように思います。
でも、1985年のドル円は150円~160円です。現在に比べるとだいぶ円安ですね。そうすると、もしも今GBP/USDが1.0790をつけるようなことがあれば、GBP/JPYも110円以下まで下がる可能性が高いです。
そう考えると、やはりGBP/USDのリスクが最小ですね。
ボラティリティ(相場変動率)
ボラティリティとは相場の変動率を表す言葉です。一般に変動率が大きいほど、収益機会は多くなります。当然、失敗した場合には損失も大きくなります。
実際のボラティリティは、集計対象期間のレートの標準偏差を用いて算出しますが、ここではそこまで面倒なことは考えません。
通貨ペアの取引レートが大きければ大きいほど、1pipsの変動が発生する可能性が高いと考えます。
例) USD/JPYの価格は109.66。GBP/JPYの価格は141.63。 141.63÷109.66≒1.292 つまり、GBP/JPYはUSD/JPYに比べて、約1.3倍の相場変動が期待できる。 |
上記の算式で、先ほどの主要通貨ペア事に変動率を算出すると以下のようになります。
※USD/JPYを基準としています。
通貨ペア | 変動率 |
USD/JPY | 1.000 |
EUR/JPY | 1.102 |
EUR/USD | 1.005 |
GBP/JPY | 1.292 |
GBP/USD | 1.178 |
GBP/JPYの相場変動が一番大きくなる可能性が高いですね。
通貨ペア決定の考え方
前述の比較から考えると、以下の候補が有望です。言葉だけ聞くと、Brexist問題で揺れる一番ホットなGBP/USDが一番安全という評価には違和感がありますが、あくまで今回の安全ナンピン取引に限った話しです。
リスク評価の観点からはGBP/USD |
ボラティリティ評価の観点からはGBP/JPY |
上の二つの条件を別の言葉にすると「ポンドを買いなさい」。「ドルを売るか円を売るか判断しなさい」ということですね。
最大取引ロット数
最大取引ロット数を決め方です。仮にGBP/USDを買うとします。この場合、安全限度を見て、最大2500pipsの下げを想定します。そうすると、0.1ロットあたり、約27,500円の損失がありえます。
計算根拠 1pipsあたりの損失額=0.1USDです。0.1USD=10.966JPYです。 10.966円×2500pips=27,415を0.1ロットあたりの最大損失と考えます。 |
前回ご紹介の取引例と同様に、証拠金20万円で取引を行うのであれば、0.6~0.7が最大ロット数の適正水準ですね。
より安全な上限数量設定をおすすめします。
ターゲット設定
ターゲット設定は好きな幅で良いと思います。ただ、あまりターゲットが近すぎると取引回数が多くなる割りに収益が上がらないこともありえます。
運用の中で最適なターゲット幅を考えて行けばよいと思います。
補足
SWAP金利について
FX取引で言うSWAP金利とは取引を行う2通貨間の金利を日々清算する行為を指します。高金利通貨を持ち続ければ、日々金利がもらえる為、この金利を狙う取引手法も存在します。
ただし、今回ご紹介した通貨ペア選択では、この金利を考慮していません。
売り(ショート)について
今回の通貨ペアの選定方法では、買い(ロング)のみを想定しています。ショートでも同じ考え方が成り立ちますが、ロングに比べると、少しですがリスクが大きくなります。
変動率の項目で少し述べましたが、変動幅(pips・金額)は通貨ペアの価格が大きくなればなるほど大きくなります。
例えば同じUSD/JPYであっても1ドル=75円の時と1ドル=150円の時では、同じ1%の変動でも損益金額は2倍になります。
ショートでこの取引を始めた場合、損失が増えるほど、変動幅も増えることとなり、少しリスクが大きくなるのを懸念しました。
主要通貨以外の通貨ペアについて
主要通貨ペア以外の通貨ペアについても取引はおすすめしません。トルコリラ、南アフリカランドなど、高金利を売りにした通貨は、多くの場合、通貨価値を毀損し続けています。このため、主要通貨と比較して元の水準に近づく可能性が低いものと考えます。
最後に
今回はより実践的な通貨ペアの決め方についてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
安全面を考慮した通貨ペアの選択、取引上限数量の算出方法について記述しました。厳格な管理を実行する限り、この方法であれば、確かにリスクは小さくなると思います。
ただし、絶対に安全という分けではありません。
マーケットは何度も想定外の事態にぶつかり、その都度、「史上初」の記録を更新し続けています。まだ記憶に新しいリーマンショックのような事件もそうですし、1985年のプラザ合意のような政策の変更もありえます。
投資は常に自己責任です。いくら利益を上げられるか、ということよりもいくら損失が出る可能性があるかを考えて取引に臨みましょう。
筆者の主口座はYJFXですが、小ロットナンピン分をLIGHTFXに移行しました。ここも1,000通貨単位の取引ができて便利の上、スプレッド、スワップ水準も悪くないです。
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